第一回「排泄の自立支援について」

八木大志
【はじめに】
排泄の自立支援と聞くとトイレでの排泄が思い浮かびやすいと思います。
しかし、排泄の自立の形は人それぞれです。
排泄の自立を支援するためには様々な角度からのアプローチが必要になってきます。
今回は全5回に分けて排泄に関わる話題を提供させて頂きます。
第1回目は排泄の自立支援についてのお話させて頂きます。
【排泄の自立とは】
みなさんは紙おむつやパッドで排泄している人は排泄が自立していると思いますか? その方自身で紙おむつやパッドを適切に捨てることまで管理ができて、自身の皮膚や周囲を清潔に保てるのであれば排泄は自立しているのではないでしょうか?
たとえば30代の男性が不意に少し尿漏れた時のために軽失禁用のパッドを使用することがあります。誰もこの方を排泄が自立していないとは思いません。高齢者でも同じで、自身で排泄物を適切に処理できているのであれば自立していると言えます。
高齢者で紙おむつやパッド、ポータブルトイレや尿瓶などを使用すると排泄が自立してないように捉えられることがありますが、トイレの便器で排泄することだけが排泄の自立とは限りません。
【なぜトイレ(便器)での排泄が求められるのか?】
トイレで排泄して、排泄物を皮膚から素早く離すことは重要なことです。 排泄物は衛生的に管理しないと感染症の蔓延に繋がることがあります。また排泄物の化学的な刺激で皮膚にトラブルが起こる場合もあります。
排泄物にはニオイがつきものです。トイレで排泄することで、ニオイを軽減することができます。たしかに、トイレで排泄することは理想的な選択であると思います。 しかし、トイレで排泄することは簡単なことではありません。様々な機能や能力、適切な環境が必要です。
【トイレ以外での排泄について】
トイレの便器以外での排泄方法もたくさんあります。ポータブルトイレ、尿瓶、おむつ、パウチ(ストーマ袋)、自動排泄処理装置など様々な方法があります。
たとえば、ある方が寝室からトイレまでの距離が遠くて、夜間だけは転倒の危険性があるので尿瓶で排泄しています。 その方が翌朝、尿瓶を自身で洗浄して衛生管理できるのであれば、排泄は自立しています。 排泄をする場所と排泄の管理方法が変わっただけです。
【なぜトイレの便器で排泄できなくなるのか?】
咳やくしゃみで尿が漏れる事やどうしても我慢できないような急な尿意でトイレまで間に合わない。
また足腰が弱っていてトイレまで間に合わないことや認知機能が低下してトイレがどこにあるかわからないなど、様々な状況でトイレ以外の場所で排泄することがあります。
トイレで排泄するためには膀胱や肛門の機能だけではなく、トイレまでの移動能力なども必要です。居室とトイレが近い場合もあれば遠い場合もあります。高齢になると膝腰の痛みやふらつきなどで転倒の危険性が増えてきます。
もちろん、居室とトイレを近くする環境調整をしたいですが、なかなかそうも上手くいかないこともあります。 この移動能力は杖や歩行器、車いすなどでサポートすることができます。 トイレまでの移動が困難であれば、尿瓶やポータブルトイレなどで排泄する場所の距離を近くすることができます。
【排泄自立のための環境について】
排泄の自立は環境面に左右されます。環境面には人的環境と物的環境があります。 人的環境とは介護者の存在や介護者の考え方などです。排泄動作が自立するかは介護者の考えに影響を受けると言われています。
介護者がトイレで排泄する事を重要と思っていないのであれば、おむつを安易に選択してしまう場合があるかも知れません。 また、医療介護の現場は人手不足です。トイレ介助を適切なタイミングで全員にできるとは限りません。人的環境によってトイレに行けるかどうかが変わってきます。

物的環境とはトイレまでの距離や手すりがあるのか、ポータブルトイレをベッドサイドに置くことができるのかなど様々です。
【尿失禁があることによる社会参加への影響】
尿・便失禁があると社会参加する際の制限に繋がる可能性があります。尿・便失禁をすると周りの環境に尿や便が付着する可能性があります。
排泄物のにおいで他の人に不快感を与えてしまう可能性もあります。 そうなると社会参加を控えてしまう方もいます。 快適に社会参加するためには排泄の自立支援は重要なことです。
【屋外での排泄自立について】
病院施設や自宅内でトイレに自身で行けても、外出した時にトイレに行けるとは限りません。外出先が初めての土地であれば、どこにトイレがあるかわかりません。
トイレが汚れていたり、混雑していて利用したい時に利用できない、手すりや車いすで入れないなど様々な要因があります。
排泄の自立は屋内の話だけではありません。しっかりと本人や家族から情報を聞いて、屋外での排泄の方法も一緒に考えることが重要です。
【今回のまとめ】
排泄自立のための第1選択肢は尿失禁や便失禁の治療です。 治療できるのであれば治療することが最優先です。そして、トイレで排泄することが理想的です。
しかし、尿失禁や便失禁は必ず治るとは限りません。その人の膀胱・肛門機能、能力や環境などに合わせて、快適に排泄できる方法を提案することが重要です。
排泄の自立には人それぞれの形があります。多職種と連携をしてどうすれば、本人や家族の望む排泄の方法になるのを考えることが重要になります。
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